細かいこと抜きにすべての材料を混ぜて型に入れ焼き上げるだけのシンプルな作り方なのに何度もリピートしたくなるニューヨークチーズケーキの作り方を紹介します。
ベイクドチーズケーキの起源は、ポーランドであるといわれています。
ベイクドチーズケーキは、ポーランドからのユダヤ系移民が持ち込んだレシピを元に、アメリカで発展しました。
そして、ニューヨークに移り住んだユダヤ人が作っていたお菓子だったのでニューヨークチーズケーキと呼ばれるようになりました。
ニューヨークチーズケーキはベイクドチーズケーキの中でもとりわけクリームチーズの割合が高く、粉類の量が少ないのが特徴です。ずっしりと重く濃厚でクリーミーなチーズケーキです。
分量
ケーキ型18㎝
- ビスケット 120g
- 溶かしバター 60g
- クリームチーズ 400g
- グラニュー糖 120g
- サワークリーム* 200g
- 生クリーム 150ml
- 卵 2個
- コーンスターチ 大さじ2
- バニラエクストラクト大さじ1.5 又はバニラエッセンス数滴
- レモン汁 1/4個分
*サワークリームがない場合はヨーグルトか水切りヨーグルトで代用できます。ヨーグルトと生クリーム半々に変えてもいいですし、クリームチーズと生クリーム半々でも可能です。
- 冷凍ラズベリー200g
- グラニュー糖40g
- 水大さじ1
クリームチーズとサワークリーム、ヨーグルト
チーズとヨーグルトの違いをご存知でしょうか?
ヨーグルトは牛乳に乳酸菌を加えて作られているのはみなさんご存知でしょう。
ではチーズとは?
チーズは牛乳に乳凝固酵素を加えて牛乳を固めた後、ホエー(乳清)を取り除いて作ります。時には乳酸菌も加えられます。
クリームチーズは生クリームに乳凝固酵素を加えて作られるのでクリーム"チーズ"と呼ばれるのです。
そしてサワークリームは生クリームに乳酸菌を加えて作られるのがサワークリームです。分かりやすく言うと生クリームで作られたヨーグルトです。
レシピではサワークリームを使いましたがない場合はクリームチーズと生クリームを半々で混ぜ合わせて代用するか、濃厚さは少しなくなりますがヨーグルトをいれて作ってください。
今回使用したクリームチーズの乳脂肪分は30%。サワークリームも乳脂肪分30%の物を使用しました。下のリンクの物は両方とも乳脂肪分30%なのでおすすめです。
作り方
ビスケットを細かく砕き、溶かしバターと混ぜ、型に入れ平らにならします。粗めに砕けばザクッとした食感が残っておいしいのですが崩れやすくなります。また、生地を流しむ時に浮いてきたりするので冷蔵庫に入れてバターを固めればこれを防ぐことができます。
型の側面にバターを塗りクッキングシートを貼り付けます。底取れ式の型を使っているのでアルミでカバーをし、湯煎焼きの際に水が入り込まないようにします。
クリームチーズ400gを常温に戻すかレンジで軽く温め柔らかくします。そこにグラニュー糖120gを加え混ぜ合わせ、サワークリーム200g、生クリーム150ml加えます。
卵は先に別容器に割り入れます。卵の殻、万が一痛んでいる卵を材料に混入させない為です。
卵は溶きほぐさずにそのまま材料と一緒に混ぜ合わせます。泡が入らないようにするためです。泡が入ると焼成時に膨らんでしまいます。みっしりと濃厚なチーズケーキに仕上げるためにも空気を含ませないように混ぜてください。
ボールにコーンスターチ大さじ2、バニラエクストラクト大さじ1.5又はバニラエッセンス数滴、レモン汁1/4個分(約12ml)を加えよく混ぜ合わせます。
型に流し入れ表面を平らにならし、湯煎焼きで180℃のオーブンで30分焼きます。
30分経ったら温度を150℃に落としさらに30分焼成します。両方ともコンベクション機能は使わずに通常のオーブン機能で焼きます。
1時間焼いたらチーズケーキを中に入れたままオーブンの電源を切り、1時間そのままにしておきます。予熱で中心部までゆっくりと火を入れるためです。
その後取り出してあら熱を取ったら冷蔵庫で6時間よく冷やします。
湯煎焼きのメリット
なぜ湯煎焼きか?
勿論チーズケーキを湯煎しないで焼く事も可能です。その場合の焼き上がりの形はケーキの外側が盛り上がり中央部分がへこんでいるような形状になります。そしてケーキ側面にも焼き色がつきます。
これはケーキ型の温度が高くなり、型に密着しているケーキの外側に火が入りすぎ、材料の卵や生地に含まれる少しの気泡が膨張します。そしてケーキの中心部へ熱が伝わるまでは時間がかかるので中心部はあまり膨らみません。
中央部分がちょうど良く火が入った時にはケーキの外側は加熱され過ぎています。
では湯煎焼きの効果とは?
スチーム効果があるので乾燥や表面のひび割れのリスクが下がります。とよく言われていますがその効果だけならスチームオーブンを使えば湯煎しなくても済む事になります。
実は湯煎焼きにはそれよりも注目すべきメリットがあります。それはゆっくりと火入れができる事です。
湯煎焼きにすることで型がお湯に触れている状態になります。お湯に触れている型は高温になりにくく、ゆっくりとチーズケーキの温度が上昇します。そのためケーキ外側が焼き過ぎとなることなく、側面にも焼き色が付きにくいのです。
そのおかげでクリーミーで滑らかなチーズケーキが出来上がると言う訳です。
追記
「じゃあ、シリコン型だったら湯煎しなくでもいいのでは?」とのコメントを頂きました。
シリコンは熱が伝わりにくい、熱くなりにくいので焼き色が付かないと考えておられると思いますが、実はシリコンは鉄、ステンレスよりも熱の伝わりが早いのです。
鉄の2倍、ステンレスの8倍ほど熱の伝わりが早いです。ですからシリコン型でも湯煎焼きは必要という事になります。
シリコンは熱伝導に優れ、食材などがくっつきにくい特性があるからこそ調理器具として利用されているのです。
ラズベリーソース
冷凍のラズベリーにグラニュー糖と水大さじ1を加えてレンジで4分加熱します。網で種を取り除きながら果肉をすり潰し、裏ごしします。出来上がったら冷蔵庫で冷やしておきます。
このようなソースをフランスではクーリーと呼びます。クーリとは野菜やフルーツをすり潰したり裏ごししたりしてソース状にしたものです。
チーズケーキが冷えたら型から取り出し、カットしてラズベリーのクーリをかけて完成です。
オーブンの機能、使い方について
オーブンの機能には大きく分けて二つ、オーブン機能とコンベクション機能があります。今回のレシピではコンベクション機能を使わず通常のオーブン機能で焼きました。
通常のオーブン機能は電気式オーブンの場合、上下にある熱線によって加熱されます。
コンベクション機能はオーブンの後方又は側面にあるファンを回し、空気を対流させて焼く方法です。
空気の対流があると熱伝導も高くなるので同じ温度でもオーブンとコンベクションを比べた場合コンベクションの方が焼き色が付きやすくなります。もし通常のオーブン機能と同じ程度の焼き色をつけたい場合は20℃ほど温度を落として焼きます。
オーブン180℃の場合、コンベクションなら160℃設定にします。
またもっと細かい設定のできるオーブンもあり、オーブン機能でも下からだけの熱で加熱する方法。コンベクションでも熱風が出てくる、上下の熱線からの加熱とファンでの対流がある、下からの加熱とファンでの対流がある、などさまざまな設定ができるものもあります。
また上の熱線だけによる加熱はグリル機能といわれ、上に乗せたチーズに焼き色を付けたいとき、上に振りかけたパン粉等に焼き色を付けたい時に使われる機能です。
オーブンで何かを焼くときには必ず予熱を。
レシピに「予熱したオーブンで...」との表記がなかったとしてもあらかじめ予熱をし、設定温度になってから焼き始めてください。
これはそれぞれのオーブンが設定温度に達するまでには個体差がある為です。あるオーブンでは5分で200度に、あるオーブンでは200度まで10分かかることもありますから出来上がりに大きな差が出来てしまいます。
またオーブンは設定温度に達するまで最大火力で温め始めます。もし家庭用電気オーブンのように天井に熱線のあるタイプならグリル機能のような火加減になりケーキ表面にすぐに焼き色が付き始めたり焦げたりします。
逆に天井に熱線のないタイプのオーブンの場合はレシピ通りの焼き時間でも中まで火が通ってないことがあります。
ですからオーブンを使う場合はあらかじめ予熱をし、設定温度に達してから焼き始めると覚えておきましょう。
フランスのクリームチーズ
フランスでクリームチーズを直接表す言葉は存在しません。よく動画でもフランス人の方から質問されます。クリームチーズはフランスではどこで買えるのか?
クリームチーズは非熟成のチーズ、フレッシュチーズの分類に入ります。フレッシュチーズの中でも乳脂肪分が高いものがクリームチーズです。
フランスではフロマージュフレという種類のチーズが一番クリームチーズに近いです。その中でもアメリカやオーストラリアで使われるクリームチーズに近いのがキリのフレッシュチーズ。
今回使ったのもKIriのクリームチーズです。少しレンジで温めるとすぐにやわらかくなりとても使いやすいです。
フランスではクリームチーズは基本的にパンに塗って食べられます。(あまりチーズケーキは販売されていません。一時期流行りましたがどこでも売っているケーキではありません)
クリームチーズを冷蔵庫から出してパンに塗るとなると固いクリームチーズではパンに塗ることができません。
なのでフランスで販売されるクリームチーズは冷蔵庫から出してすぐにパンに塗れるような固さに仕上げられています。サンモレ、クレメットと呼ばれるチーズです。
乳脂肪分も20%前後であるものが多くKiriやフィラデルフィアの30%に比べるとあっさりしていてやわらかいのが特徴です。
フィアデルフィアのクリームチーズもフランスで売られていますが乳脂肪分が20%ほどに削減され、パンに塗りやすい柔らかさに調節され販売されています。
下の写真はサンモレというクリームチーズです。
パンに塗ってスモークサーモンとシブレットを添えれば立派なおつまみになります。
フランスの生クリーム、サワークリーム
日本で生クリームといわれるものはフランスではクレームリキッド又はクレームフルーレットと呼ばれます。安いものでは200mlで1€を切るものもあります。
乳脂肪分は15から30%ほどです。それよりも脂肪分の高いものとなるとまず見かけません。日本では35~45%の物もよく見かけますよね。
フランスの生クリームは泡立てても固くならないんです。これは脂肪分が30%しかないためです。ショートケーキでも作ろうかと思って生クリームを泡立てても固くならないのでデコレーションできないのです。
固く泡立てるためには「シャンティフィックス」と呼ばれるものを生クリームに少し加えて泡立てます。でもやっぱり日本の生クリームの様な質感にならないんですよね。
サワークリーム
フランスで一般的に購入できるサワークリームと似たものはクレームエペスと呼ばれます。エペスは「濃い」という意味です。
しかしこのクレームエペスはサワークリームよりも酸味が弱いのです。フランス語でサワークリームは正確にはクレームエーグル(エーグルは酸っぱいの意)というのだそうですが、フランス人にクレームエーグルはどこで買えるのか聞いても「なにそれ?」と言われます。
スーパーなどで普通に売られてないので馴染みがないのです。
ネットで調べるとクレームエーグルはクレームエペスにライムの汁を加えなさいと書かれているのみでした。
サワークリームもクレームエペスも乳酸発酵させて作られているのでほとんど製法は変わらないかと思います。
ヨーロッパの乳製品って多種多様で本当に難しいんですよね。フランスのチーズともなると300~400種類あるとも言われ、一つ一つのチーズに舌を噛みそうな名前が付けられています。
ここから先の話はややこし過ぎるので今日のところはこの辺で。