ローストビーフを完璧に仕上げる為に科学的な目線で5つのポイントを詳しくまとめました。
これらのポイントはすべての肉のローストの基本となります。
ローストビーフを一度も作った事がなくても、ある一つの道具の力を借りるだけでレストランで出されるようなロゼ色のローストビーフが家庭で作れます。
- 1.肉は必ず常温に戻す
- 2.肉表面を高温短時間で焼く
- 3.徹底した温度管理を行う
- 4.肉を休ませ余熱で火を入れる
- 5.肉を休ませ肉汁の流出を防ぐ
- まとめ
- フライパンローストビーフの作り方
- 材料3~4人分
1.肉は必ず常温に戻す
冷蔵庫から出したての肉4℃と常温に戻した肉20℃では16℃も差があります。
この16℃の差を埋めるためにはより長時間の加熱が必要となり時間がかかります。
長時間加熱されると肉の表面が加熱され過ぎる事になります。
その結果、肉の中心部は適温でも、外側は火が入りすぎて肉汁、赤みが失われてしまいます。
2.肉表面を高温短時間で焼く
焼き鳥や焼肉がおいしい理由と一緒です。炭を使って高温で焼くからメイラード反応が起きて香ばしく、旨みがあるのです。
低い温度では効率的に短時間でメイラード反応を起こすことはできません。
▼メイラード反応については過去記事に詳しい説明があります。
完全理解 肉焼き理論① メイラード反応 - EMOJOIE CUISINE
肉をオーブンやスチームコンベクションに入れる前に高温のフライパンで焼きメイラード反応を起こさせましょう。
少し煙が上がっているぐらいの高温のフライパンできれいに焼き色を付けてください。
表面を焼くと肉汁を閉じ込めてくれるとよく耳にしますが、これはあまり根拠のある話ではありません。
むしろ香りや味の面でこの表面を焼く行程は欠かせません。
3.徹底した温度管理を行う
ローストビーフというからには生ではいけません。しかし加熱し過ぎてもいけません。
理想的な仕上がり温度は
- レアなら54℃
- ミディアムレアなら57℃
- ミディアムなら60℃
肉を適温に加熱さえ出来ればオーブンを使おうが、フライパンで蒸し焼きにしようが、炊飯器でも、真夏の炎天下の車内でも、パソコンタワー内部であろうが良いのです。
もっとも完璧なのは真空調理です。
肉をパックに入れてお湯に入れるだけ。
肉の大きさによって加熱時間は変わりますが数時間60℃を保てるお湯に入れておく。
当然60℃以上には上がらないので完璧な火入れで、肉全体がむらなく仕上がります。
オーブンやフライパン、真空調理で作る時でも温度計があれば簡単に正確に仕上がります。
特にローストビーフ初心者の方にはマストアイテムでしょう。
温度を測るときは肉の中心温度を測ります。
ローストビーフに限らず、厚めのステーキを焼く時でも正確な焼き加減で仕上げる事が出来ますし、揚げ物の油の温度を測るときでも使えて大変便利です。
それから加熱の温度設定について。オーブンなら180℃設定でもいいのですが160℃でも140℃でも問題ありません。
低い温度の方が時間は掛かりますがゆっくりと火入れをすることで肉全体を均一なロゼ色に仕上げることができます。
またオーブンで加熱中に一度外に出して休ませ、またオーブンへ戻しゆっくりと火入れしていくことも方法の1つです。
熱が肉の中心まで伝わるのは時間がかかります。
特に冷たい肉を高温のオーブンに入れると、肉外側は火が入りすぎ、肉中心部は生という事が起こってきます。
フライパンでローストビーフを作る時の注意点
オーブンは200℃、300℃の熱風ですが手を入れてもすぐには火傷しません。蒸気は100℃ですが触れたらすぐに火傷してしまいます。
蒸気による加熱は熱の伝わりが強烈なので、肉中心が適温になっていても、肉の外側は予想以上に加熱され赤みを失う事があります。
その為、加熱途中に蓋を開けて蒸気を逃したり、一度火を止めながらゆっくりと加熱していくなどの処置が必要です。
オーブンでもフライパンでもゆっくりと肉全体の温度を上げていく事がとても大事です。
何分加熱すればいいのか?
肉の厚さや加熱温度によって変わってきますので一概には言えません。
- 肉が厚ければ時間が掛かる
- 加熱温度が低ければ時間が掛かる
- 肉の温度が低ければ時間が掛かる
同じ重さの肉でも厚さはまちまち。180℃で何分加熱してくださいという表記は参考程度にしかなりません。
だからこそ温度計を使って仕上がりを判断する事が重要です。
ローストビーフは”焼く”と言うより”温める”と言った方が適切な表現かもしれません。
4.肉を休ませ余熱で火を入れる
オーブンの中で肉は、肉の外側から熱を受けるので、あたりまえですが中心部より肉外側の温度が高いです。
熱は均等になろうとする性質があるので、温度の低い部分(肉中心部)へと伝わります。
この効果によりオーブンから肉を取り出しても加熱が進むのです。
( この原理は物理学の世界では熱力学第二法則と呼ばれています。)
また休ませる環境温度によっても火の進み具合は違ってきます。
いくつかの肉を同じ温度で取り出し、それぞれ①[皿の上] ②[アルミホイルで包む] ③[オーブンの熱排気の上部]に置いたとしたら、一番火が入るのは③のオーブン熱排気上部、続いて②のアルミホイルで包まれた肉、そしてもっとも温度が上昇しないのは①の常温の皿の上です。
肉を取り出し、皿に載せただけでも最低2~3℃程中心温度が上がります。もし肉を高温で加熱していたとしたら5~10℃中心温度が上がります。
ですので必ずアルミホイルで包んで休ませなくてはならないと言う理由はありません。
加熱しすぎたと思ったら、その余熱を断ち切るために数分間冷凍庫に入れるのも1つの手段ですし、焼きが少し甘いなと思ったらアルミで包む、または温かい場所で休ませるなどの判断をし、その余熱を計算に入れて休ませるべき所で休ませましょう。
5.肉を休ませ肉汁の流出を防ぐ
オーブンから肉を取り出し、すぐに切ると肉汁が流れだします。
なぜなら肉の加熱は外側からじわじわ進みます。
外側から順に筋繊維が収縮し肉汁が中心部へ移動します。
焼きあがったばかりの肉は中心部に肉汁が集まっています。そこを切り開くと肉汁は簡単に流れ出します。
これを防ぐためにも肉を休ませます。余熱での加熱が落ち着き始めると、肉汁が全体へ分散し切っても流れにくくなります。
ローストビーフに限らず、ステーキでも焼き立ての熱々をナイフで切って食べるより、少し休ませたステーキの方がより多くの肉汁を口に運べます。
皿の上に流れ出る肉汁より口の中へ流れ出る肉汁の方がおいしいと思いませんか?
まとめ
ここまでが通常の肉をローストする場合の手順となります。レストランなどで働く料理人は温度計を使わずに手に伝わる肉の触感などから肉のロースト具合を判断し仕上げます。毎日肉を焼くからこそできる職人技なのです。
では調理経験もあまりなく、これほどまでの注意点を守りながらローストビーフを作る自信がないという方、面倒な事はしたくないけどおいしいローストビーフを作りたいという方は低温調理をお勧めします。
3.徹底した温度管理を行うの欄で少し触れましたが「肉をパックに入れてお湯に入れるだけ。」でだれでも簡単に素晴らしいローストビーフが作れます。
ただお湯の温度を常に一定に保てる器具を購入する必要があります。
水温制御クッカー Anova Culinaryという調理器具が家庭で手軽に低温調理を可能にしてくれます。お値段は少し高いですが完璧なローストビーフを作りたいと思う方は是非試してみてはいかがでしょうか?
フライパンローストビーフの作り方
動画でも作り方を解説しています。フライパン一つでローストビーフとグレービーソースまで作るレシピ動画となっています。
材料3~4人分
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牛もも肉(うちもも又はしんたま又は牛フィレなど)500g
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塩コショウ 適量
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玉ねぎ 1~2個
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にんじん 1~2本
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ニンニク 1片
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その他香味野菜は何でも
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油と小麦粉を同量で混ぜ合わせたものを適量(とろみ付け)
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バター(ソース用)20g
牛肉に塩コショウをし強火のフライパンで焼き色を付ける。焼き色が付いたら皿などの取り出しておく。
野菜を薄く切りフライパンで色が付くまで炒めたら、肉をフライパンに戻し蓋をし火加減は極弱火に。
時々肉の上下を入れ替える。この時蓋を取ることで蒸気を逃がして急激な火入れを防止し、ゆっくりと火入れするためでもあります。決して焦らずゆっくりと火入れする事で肉全体をむらなくロゼ色に仕上げられます。加熱途中に一度火を止めることも有効な手段です。
目標の温度はレアなら54℃、ミディアムレアなら57℃、ミディアムなら60℃ですが、フライパンから取り出しても余熱で温度が上昇するので目標温度の3~5℃手前で取り出します。取り出したら乾燥しないようにラップやアルミを被せておきます。
肉を休ませてる間にソースを作ります。野菜の入ったフライパンに水を加え5分くらい弱火で煮て、漉します。そこに油(バターでも可)と小麦粉を同量で混ぜ合わせたものを加えて混ぜながら沸騰させとろみをつけましょう。仕上げにバターを溶かし込み塩で味を調え完成です!
大きな塊の牛肉は値段も高いでしょうからまずは豚肉で練習してみるのもいいと思います。
豚肉の場合は60℃~65℃の中心温度で仕上げてください。しっとりと火入れされた豚肉のおいしさはローストビーフに負けないくらいおいしいですよ。
レシピはこちら↓
豚肉のフライパンローストとソースシャルキュティエール - EMOJOIE CUISINE えもじょわキュイジーヌ
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